JR北海道は、根室本線の一部区間である富良野駅〜新得駅間(81.7km)について、鉄道事業を廃止することで沿線自治体と合意に至り、2024年3月31日(日)をもって列車の運行を終了することが正式に決まりました。
かつての大動脈は利用者40分の1に
富良野市内で2023年3月30日(木)、沿線自治体で構成する根室本線対策協議会とJR北海道、道による会議が開かれました。協議会からは廃止区間沿線にある富良野市、南富良野町、占冠村、新得町の4市町村と、同線の滝川駅〜富良野駅間沿線にある滝川市、赤平市、芦別市の各首長らが出席し、廃止の同意書に署名しました。
協議会とJR北海道は、廃止後の新たな交通体系として路線バスへ転換する方向で話し合いを進めてきました。北海道新聞の報道によると、バス転換の初期費用と向こう18年間の赤字相当額に加え、4市町村に対するまちづくり支援金2億8千万円を合わせた計20億円9千万円をJR北海道が拠出することについても合意しています。
鉄道事業法では事業の廃止を1年以上前に届け出ることが定められているため、JR北海道は廃止予定日を2024年4月1日(月)として国土交通大臣宛てに鉄道事業廃止の届出書を提出しました。
かつては札幌と道東を結ぶ大動脈を担っていた根室本線の富良野駅〜新得駅間ですが、1981年(昭和56年)に石勝線が全線開業してから特急列車の運行がなくなり、需要が激減しました。加えて、今回の廃止区間に含まれる東鹿越駅〜新得駅間は、2016年(平成28年)8月の台風による集中豪雨により甚大な被害を受け、現在もバスによる代行輸送が続いています。
1日1kmあたりの利用者数を示す輸送密度は、1980年(昭和55年)度の4,664人に対し、2015年(平成27年)度は152人と、40分の1にまで落ち込んでいます。さらに、災害による運転見合わせや、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2021年度の輸送密度は50人にとどまっています。
高規格道路網の整備や人口減少などが要因となってJR北海道の経営状況は厳しく、根室本線の富良野駅〜新得駅間を含む5線区は「単独では維持することが困難な線区」であると示しました。“赤線区間”とも呼ばれるこれらの線区は、輸送密度200人未満と極めて少なく、運行コストを運賃収入では到底まかなうことができない赤字体質が続いています(廃止される根室本線富良野〜新得間を含む広域路線図、輸送密度の推移など詳細は下の図表を参照)。
年間10億円の運行費払えず
富良野駅〜新得駅間を鉄道として存続するためには、年間10億9千万円の費用を関係者に負担してもらう必要があるとJR北海道は試算しました。それとは別に災害からの復旧工事費として10億5千万円がかかり、単独で拠出できる状況にないとの立場を表明しました。
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鉄道として持続可能な線区を対象としている国の支援は見込めないため、JR北海道は協議会に鉄道存廃についての検討を申し入れました。沿線4市町村や道は鉄路存続の可能性を模索しましたが、やはり財政状況が厳しいことから費用負担は困難であるとし、存続を断念して新たな交通体系へ移行することを軸に協議を重ねてきました。
列車の運行は2024年3月31日(日)をもって終了する予定で、バス転換後の運営形態や運行ルートなどについて、民間のバス事業者を含めた具体的な話し合いに入ります。また、不通区間の東鹿越駅〜新得駅間は、復旧に着手することなくこのまま廃線を迎えます。
JR北海道の赤線区間は、石勝線の新夕張駅〜夕張駅間が2019年4月に廃止となったのを皮切りに、2020年5月に札沼線の北海道医療大学駅〜新十津川駅間、2021年4月に日高本線の鵡川駅〜様似駅間が相次いで廃止されました。最近では、2023年3月31日(金)をもって留萌本線の石狩沼田駅〜留萌駅間が運行を終了し、残りの深川駅〜石狩沼田駅間も3年後に廃止される予定です。
今回の根室本線の一部廃止合意により、赤線5線区についてはすべて廃止となることが決まりました。しかしながら、JR北海道はほかにも不採算線区を多く抱えており、鉄道維持のための仕組みづくりについて今後も地域との話し合いが続けられます。